2025.3.3 入学審査, 進学準備

AP(アドバンスト・プレイスメント) プログラムの概要

原田 誠 写真
海外大学進学研究会コンサルタント原田 誠Makoto Harada

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Advanced Placement

アメリカの高校に進学すると、多くの生徒はAP(アドバンスト・プレイスメント)のコースを履修するかどうかの選択に迫られることになります。APコースで良い成果を挙げると、大学進学で有利になる一方で、学習への負荷も大きくなるため、自分にとってベストな履修方法を検討する必要があります。今回は、アメリカの高校で提供されるAPプログラムについてご説明します。

APプログラムとは

APプログラムは、高校在学中に、大学のイントロレベルのカリキュラムが学べるプログラムです。SATで知られているアメリカの非営利団体「カレッジボード」によって運営されています。IB(国際バカロレア)と同様に、学習への高い意欲を示す高校生を対象とした高度な教育プログラムとして、世界的に認知されています。日本でも、アメリカンスクールなど、一部の高校で採用されています。

APプログラムでは、英語の読解・作文、数学の微積分、歴史のアメリカ史など、全部で38のコースが用意されています。APプログラムはを採用する高校は年々増え、2016-17年度は、約2万2千校で274万人の高校生が履修しています。

APコースの履修者は5月初旬にAPテストを受け、5から1までの5段階(5が最高)で評価されます。

入学審査における価値

アメリカの高校生がAPコースを履修する目的のひとつとして、大学進学を有利に進めることが挙げられます。

APプログラムを履修する学生は、大学レベルの学習を通して、実際に大学で学習をする際に必要となる様々なスキルを身につけることができます。カレッジボードによると、高校でAPコースを履修した学生は、そうでない学生と比べると、大学でより高い成果が得られるそうです。

そのため、アメリカの大学はAPプログラムのような大学レベルの学習にチャレンジする高校生を、入学審査で高く評価します。例えば、USC(南カリフォルニア大学)のアドミッションの基準には、「APまたはIBのクラスが高校で提供されている場合は、履修すべきである」と明記されています。

APプログラムは、アメリカの大学だけではなく、ヨーロッパの大学でも評価されます。例えば、イギリスやオランダの大学のように3年で卒業できる大学では、大学レベルの一般教養をある程度学んでいることが受験資格となっているため、高校卒業後すぐに進学することは難しいです。しかし、APプログラムで、3つのコースで3以上の成績を修めると、受験資格を得ることが可能となります。ヨーロッパの大学に進学するためにはIBディプロマが必要だとよく言われますが、実はAPプログラムもきちんと評価してもらえるのです。

大学教育における価値

APプログラムは大学レベルのカリキュラムなので、APコースで一定の成績を修めると、アメリカの大学で単位として認定されます。単位の認定方法は、大学により異なります。APテストの結果が3以上の場合は、単位として認定される可能性がありますが、学力評価を重視する大学では4以上を要求する場合が多く、中には5以外の成績は単位として認めないという大学もあります。

履修したAPコースが大学の単位として認定されない場合でも、APコースの成績は学力の評価に活用されます。つまり、APコースで履修したクラスと同等レベルのクラスを大学で履修する必要は無くなり、上位クラスから履修を始めることが可能となります。この場合、大学で履修する単位数が減るわけではありませんが、自分が取りたいクラスを履修に時間を割くことができるため、学生にとって価値はあります。

一般的に、アメリカの州立大学はAPコースの単位認定に積極的です。その背景には、大学運営において予算の制約で一般教養コースに十分な教員を配置できないという、州立大学特有の問題があります。APコースをなるべく多く単位認定をすることにより、大学の一般教養コースの学生数が抑えられることは、州立大学にとって大きなメリットです。

APコースの履修方法

日本の高校でAPコースを履修する機会は、現状ではあまり多くありません。しかしながら、海外大学を目指す高校生にとって、APコースを履修すると大いに有利になることは、明らかです。海外大学進学研究会では、APプログラムを日本で普及させる活動も行っています。近い将来、日本の高校生が複数のAPコースを履修できるようになることが、私たちの目標です。