この質問が高3担任から来るのは当然の事だと思います。日本の大学への出願では、書類提出の責任を学校が負う事が今も暗黙の了解となっています。緘印を押した調査書など、郵送する各種書類のチェックを担任が行い、共通テストの出願の際は、受験人数ゆえ担任と進路指導部でチェックをします。書類に不備があると、家庭ではなくて、学校に電話が掛かってきます。一部の日本の大学ではインターネット出願を採用していますが、それでも郵送すべき書類があるので、結局は担任がチェックすることになります。
この責任の所在が海外大学進学では全く違い、海外大学へのアプライでは書類提出の全てに責任を負うのは生徒本人のみです。書類不備があるのかないのかを学校が直接知る方法はありません。こうなる事情を以下でご紹介したいと思います。
海外大学へのアプライでは全てオンラインで完了でき、むしろ郵便でのアプライ方法を見つける方が難しいほどです。学校が用意する「英文成績証明書」(transcript) は、後にご紹介する「コモン・アプリケーション」(Common Application) に学校がPDFファイルをアップロードするケースもありますが、出願段階で生徒本人が英文成績証明書のPDFファイルをアップロードするケースもあります。英文成績証明書は調査書ではないので、生徒による事務室での申請や発行手数料の支払いは不要となります。推薦状の提出は通常、推薦者から直接大学に提出しますが、推薦状が不要な大学や必要な分に追加して推薦状を提出する場合は、生徒がアップロード出来るケースがあります。いずれにせよ、学校は書類の発行とPDFファイルへの変換を行い、必要に応じて生徒にPDFファイルを渡すだけになります。
海外大学へアプライすると、アプライ先の大学から応募者専用ポータルのリンクがID番号とパスワード付きで生徒にEメール送信されます。このポータルの画面を見れば一つ一つの書類が提出されているか確認できます。このポータルへのリンクは学校に送られてきませんし、生徒個人に送られたリンクを学校が共有する事は個人情報保護の観点から望ましい事ではありません。管理職・進路指導部・高3学年担任による会議で担任が報告すべき内容は、このポータルの画面を事前に見ておくだけで十分得られます。
書類不備についてですが、海外大学の場合、アプライ自体が完了さえしていれば、あまり遅くならない限り、事後の書類提出も可能です。海外大学へのアプライでは、出願書類などに不備があれば、その不備がなくなるまで合否の審査が延期されるだけであって、アプライ自体は無効になりません。この事はTOEFLの点数が足りない状態でアプライする場合と同じですが、勿論長く放置する事は許されません。
アメリカには「コモン・アプリケーション」(Common Application) という、1,000以上の大学が利用する大学共通出願システムがあり、このシステムを使うと生徒は一人最大20校までアプライできます。コモン・アプリケーションを利用したアプライでは、英文成績証明書・推薦状の作成と学校情報の入力が高校の仕事になりますが、その代わりに同じ書類を何度も用意しなくて済みます。更に、窓口となる高校教員は自分及び生徒がアップロードすべき書類のうち何が実際にアップロード済で、そのうちの何が大学によってダウンロードされたかも見る事が出来ます。しかし、コモン・アプリケーションで生徒のアプライにかかる全ての情報が確認出来るのではありません。生徒のアプライ状況に関する全ての最新情報は、応募者専用ポータルでしか確認できません。
従って、応募書類のチェックについて学校にふつう出来る事は、生徒の応募者専用ポータルの画面を見る事だけです。この事は、海外大学にアプライした後、生徒が応募者専用ポータルをどれだけ小まめにチェックしているかの方が遥かに大事である事を意味します。例えば SAT® のようなテストの点数がアプライ先の大学に送信されるよう生徒が 2 週間前に手配したのに、応募者専用ポータルには「未提出」となっているケースは多々あり、このような場合は即座に大学の「アドミッション・オフィス」(admission office) に連絡する必要があります。
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