全国の多くの高校の進学実績が示すとおり、国内大学と海外大学との併願は勿論可能です。但し、それには「海外進学準備の方を中心に進めれば」という条件を付けた方がよいでしょう。これは生徒の海外進学準備に多大な時間と労力を要する事に加えて、高校の授業も決して疎かにはできない事に理由があります。
海外進学準備の柱は TOEFL iBT® などの英語能力試験で所定の点数を取る事、「パーソナル・エッセー」(personal essay) を作成する事、そして高校での評定平均 (grade point average: GPA) を可能な限り上げる事の三つですが、三つのうちのどれが疎かになってもその分合格が遠のきます。
まずTOEFL iBT®などの英語能力試験ですが、英語だけで行われる授業を高校で沢山受けている場合は別として、所定の点数を取るためには相当な努力と時間を必要とします。所定の点数はアプライする大学によって当然異なりますが、概してアメリカの大学は他の国の大学よりも低めに設定されています。下の表はアメリカの4年制大学のうち215校をピックアップし、出願に必要な TOEFL iBT® の最低点をグラフにしたものです。
この表にも表れているとおり、TOEFL iBT® の最低点には4つのグループがあります。一番低いグループが61点で、これを下回るとアプライする大学がほとんどありません。次が70点のグループで、一般的なのは80点のグループです。そして最後が難関校のグループで、最低点は100点以上です。
日本の大学にもごく少数ながら英語のみで授業を受けるコースがありますが、そういったコースを生徒が併願で受験する場合でも、受験に必要となる点数はアメリカの大学と大きく違いません。同志社大学国際教育インスティテュートが85点、上智大学国際教養学部 (公募制推薦) は83点、立命館大学国際関係学部 (ジョイント・ディグリー・プログラム総合評価方式) が76点、早稲田大学国際教養学部は最低点を設定していませんが、文化構想学部 (国際日本文化論プログラム) の最低点が72点であることを考えると、やはり80点前後が無難であると考えるべきでしょう。また、国際教養大学は総合選抜型で61点と低めですが、ここは「合格した場合には、必ず入学することを確約でき」なくてはならないので、併願では受験できません。
TOEFL iBT® の80点がどれほど難しいかを考える上での資料がインターネット上にあります。かつて文部科学省がセンター試験の民営化を計画した際、各種英語検定試験と「セファール」(CEFR; 外国語の習得状況を示すガイドライン) との対照表を作成しました。そこにはTOEFL iBT® の80点が英検® の準1級に相当するとありましたが、文部科学省は TOEFL iBT® を相当低く見積もっていたようです。英検® のウェブサイトには入学資格として英検®が使える海外大学を検索するためのページがあります。このページをもとに各大学の語学要件を調べると、英検® の準1級が TOEFL iBT® の80点前後に相当すると見做している大学は全体の約3分の1で、61点前後に相当すると見做している大学が約5分の1、残りの3分の1が70点代に相当すると見做しているという結果が出ます。こういった事からも TOEFL iBT® の80点は英検®1級かそれ以上に相当すると考えた方が無難です。この事は同時に、TOEFL iBT® で80点を取れば、英文和訳・和文英訳がない国内の入試なら十分対応できる事を意味します。

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