海外大学進学において、TOEFL® などの英語検定試験の点数および「パーソナル・エッセー」(personal essay) に並んで重要なのが高校での評定平均 (grade point average: GPA) です。日本の大学の各種推薦試験においても評定平均は重要ですが、海外大学進学においてはその重要度が日本よりも遥かに高いことをご紹介します。
応募要件としての評定平均は「オール4以上」がふつうですが、その扱い方は国や大学によって異なります。アメリカの大学が日本の大学のように評定平均を応募要件として使うことはあまりありませんが、ポートランド州立大学 (Portland State University) のようにオール4を応募要件にしている大学も一部存在します。オーストラリアやニュージーランドにはオール4以上で「ファウンデーション・コース」(foundation course; 予備コース) を経由せずに学士課程に入学できる大学があります。オランダのライデン大学 (Universiteit Leiden) にも学士課程に入学できるコースがありますが、ライデン大学では4.5以上且つ4未満の科目がない事が応募要件です。
これだけを見ると日本とかわらないように見えます。しかし、海外の大学はテストの点数以上に評定平均を重視しており、この点は日本の大学と全く違います。下の図は私が当時の勤務校で説明会の際に使っていたスライドです。
このスライドに SAT® の文字がありますが、これは大学入学共通テストのアメリカ版とでも言うべき全国標準学力テストです。但し、大学入学共通テストとは違い、SAT® の科目は英語と数学のみで、年7回まで受験でき、受験生は一番良かった結果を大学に提出します。このスライドで SAT® を色分けしているのは、難関校以外のアメリカの大学が SAT® を、アメリカのテストであるにもかかわらず、応募要件としていないからです。
アメリカを含めた海外大学には学力テストがないのがふつうです。これは大学のアドミッション・オフィスが「潜在的な学力」(academic potential) を全国標準学力テストではなく、評定平均で測るからです。言い換えれば、海外大学はテストの点数を補助資料程度にしか見ていません。アメリカの場合、大学が全国標準学力テストに対する不信感を持ち始めたのは今から20年以上前で、2001年に当時カリフォルニア大学の総長であったリチャード・C・アトキンソン (Richard C. Atkinson) が入学審査から SAT® の点数を除外するよう提案したり、2004年にベイツ大学 (Bates College) が全米大学入学カウンセリング協会 (National Association for College Admission Counseling: NACAC) の全国会議の場で、SAT® の点数と大学の成績との間に相関関係が見られないというデータを発表したりするなど、様々な動きがありました。
SAT® について現在では、非常に多くのアメリカの大学が「テスト・オプショナル」(test-optional) という方針を採用しています。テスト・オプショナルの大学では SAT® の結果を提出する事が義務付けられていませんが、提出すれば合否判定の際に考慮されます。また、カリフォルニア大学がとっている「テスト・ブラインド」(test-blind) という方針では、SAT®の結果を提出しても考慮されません。SAT® の使い道の一つとして、評定平均の低い高校生が自分の学力を証明するために SAT® を受験する場合がありますが、カリフォルニア大学はその方法さえ使えません。
ここまで見てきたように、海外大学進学ではテストの結果よりも評定平均の重要性が遥かに高いのですが、SAT®の受験が無意味だという事ではありません。例えば、オーストラリアのシドニー大学 (University of Sydney) のように、評定平均ではなく、SAT® の点数が一定以上であれば直接学士課程に入学できるところがあります。また、アメリカの難関校は今でも SAT® の結果を提出する事を義務付けています。総じて言えば、全国標準学力テストを受験すべきかどうかは、個人の受験計画次第です。

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