2025.7.25 進路指導

海外進学コースのチェックリスト その5

森 成業 写真
海外大学進学研究会コンサルタント森 成業Seigyo Mori

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6 海外進学コース専任教員は自分の校務を理解しているか

一般的に海外進学にかかる実務は、担任が行うのではなく、別の教員が担当した方が負担の点で公平です。それは担任がクラス生徒情報の「ハブ基地」であるからです。担任はクラス生徒全員についてすべての情報を持っていなくてはなりません。その為に担任は欠席日数や欠課時数に目を光らせ、各教科担当や保護者、場合によっては児童相談所ともコンタクトを取り、その他の校務については言い出せばキリがありません。今、担任が国内大学の進学指導でパンクしていないのなら、それは進路指導部や各教科などが担任の便宜に供するために intelligence (加工された情報) を提供しているからであり、この点を考えると、担任が海外進学の細かい指導に深く関わるよりも、海外大学進学の実務を担当する教員が担任に情報を提供する方が現実的です。

専任教員の仕事として考えられる一つ目は、生徒一人一人の進路にかかる進捗の把握です。以前のコラムでも言及しましたが、海外大学への進学準備における土台は、生徒本人が学びの方向性・路線をある程度まで把握していることであり、これがないとパーソナルエッセーも大学のアドミッションとのオンラインインタビューも成り立ちません。この方向性・路線は生徒が調べ学習や発表を繰り返す中で明確になっていくものですが、その進捗状況を把握し、後に生徒の推薦状をとおして生徒の強力な後押しとなれるのは、この進路指導を行ってきた教員です。

二つ目は海外大学へのアプライにかかる実務です。海外の多くの国には、オンラインで完結し、複数の大学へのアプライが一つのプラットフォームで完了する共通出願システムがありますが、米国で最も有名な出願システムは Common Application です。このシステムを使うと一人20校まで出願できますが、高校の側はこのシステムに英文成績証明書や推薦状など各生徒の情報、高校3年生の人数などの教務関連情報、大学進学率などの進路関連情報といった様々な内容をすべて英語で入力・アップロードします。高校側が学校関連情報を事細かに入力しなくてはならないのは Common Application と Coalition Application ぐらいですが、こういった出願システムの使用にはある程度慣れていないと、生徒が他のシステムをとおしてアプライした時の対応に苦慮することがあります。

三つめは広報にかかる校務です。中学3年生対象の学校説明会で海外進学コースについての案内をする時に担当教員に海外大学進学全般についての知識がないと、曖昧な説明や果たせない約束をした後で問題になりかねません。在校生の保護者を対象とした説明会においては猶更のことであり、総じて話し手の知識不足は聞き手に疑念を抱かせるだけの結果に終わります。

四つ目は海外大学進学にかかる校内における情報提供者としての役割です。ゼロであることを望みますが、上長にせよ同僚にせよ、間違った、あるいは極めて断片的・逸話的な情報をもとに自信満々で間違いを言い、且つ自らの発言の責任は取らないAIのような人はいるものです。ここで同僚ならともかく、上長である場合は間違いを適宜指摘しなくてはコースの存続を危うくします。

上に挙げたような校務を必ずしも一人の教員がする必要はありませんが、こういった校務を複数の教員間で分担する場合は、教員間の緊密な連携が必要になることは想像に難くないと思います。