2025.12.13 進路指導

海外進学コースのチェックリスト その9

森 成業 写真
海外大学進学研究会コンサルタント森 成業Seigyo Mori

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11 Common Application の使い方を指導しているか

アメリカには「コモン・アプリケーション」(Common Application; 以下 Common App) という、1,000以上の大学が利用する大学共通出願システムがあり、このシステムを使って生徒は一人最大20校までアプライできます。Common App を利用している大学は圧倒的多数がアメリカの大学ですが、若干数のアメリカ以外の大学も Common App を利用しています。

高校が Common App による出願方法を生徒に指導することは、アメリカだけに限らず、海外進学指導全般において非常に大きな意味を持ちます。第一に、英語圏やヨーロッパの大学の中で出願の締め切りが一番早いのは、アメリカの early deadline (早期出願) であり、この出願準備として用意したエッセイなどは、他国の出願準備の際にある程度の使いまわしができます。しかし、それ以上に進学指導上役立つことは、Common App の入力作業をとおして、海外大学の合否審査について理解が深まることです。後に紹介しますが、Common App の入力項目には、家族構成や高校1年次の履修科目名など、今すぐ入力できる内容が多数含まれています。しかしその一方で、入力項目は多岐にわたり、一見しただけでは教員が見ても何を入力すればよいか分からない項目も多数含まれています。従って、Common App の入力は、生徒任せにするのではなく、高校のなるべく早い段階から進路LHR等の時間を使って入力方法を指導することが最適です。

日本には多数の私立大学が参加している UCARO® というポータルがありますが、これは Common App とは全く性質が異なるものです。Common Appが各大学の出願業務を一括代行しているプラットフォームである一方で、UCARO® は各大学の入試課が集まったオンライン上の寄合所帯です。Common App では、生徒も教員も成績証明書やエッセイなどを Common App にアップロードし、TOEFL® や SAT® ななどの公式スコアを別にすれば、Common App だけで出願の全過程が完結しますが「UCARO でできること」は大学によって大きな差があります。また、電子書類を提出する場合でも、UCARO® では誘導先の各大学に提出するのであって、UCARO® 自体には何もアップロードしません。更に、Common App には私立以外の大学やアメリカ以外の大学も参加していますが、UCARO® に参加している大学は大半が私立であり、参加している国公立の活用方法は極めて限定的です。各大学の足並みが揃っていない UCARO® を Common App と同一視することには無理があります。

Common App を利用した出願では、英文成績証明書・推薦状のアップロードと学校情報の入力が「カウンセラー」(counsellor) として指名された教員の仕事になりますが、カウンセラーは同一生徒について同じ書類を何度も用意しなくて済みます。更に、カウンセラーは自分及び生徒がアップロードすべき書類のうち何がアップロード済で、そのうちの何が大学によってダウンロードされたかも見る事が出来ます。

しかし Common App については教員にとって不便な面もあります。Common App は、生徒向けにせよカウンセラー向けにせよ、全入力項目について何をどう入力するか、その用語の意味は何かを網羅した公式の入力マニュアルが存在しません。Common App のウェブサイトには生徒用カウンセラー用の検索エンジン付FAQページはありますが、このページはすべてを網羅してはいません。また、カウンセラーが生徒アカウントの入力内容を編集することはできません。更に、これは Common App が悪いのではありませんが、Oregon State University のように外国人出願者に Common App が使えないケースがあるので、Common App による出願が可能かどうかを大学のウェブサイトで必ずチェックする必要があります。

Common App の指導にあたっては、海外進学専任教員が生徒としてのダミーのアカウントと、自身が本当に使うカウンセラー (Common App では ‘recommender’ とも呼びます) としてのアカウントを両方事前に作成し、入力方法の指導に備える必要があります。次回以降のコラムでは、生徒とカウンセラーのそれぞれが何を入力するのかについてご紹介します。