2025.10.9 進路指導

帰国生を支えるための視点 その③ 「帰国のタイミング」

吉田 栄一 写真
海外大学進学研究会コンサルタント吉田 栄一Eiichi Yoshida

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海外の大学の画像

「帰国のタイミング」の違いによる、帰国子女理解

海外からの帰国子女と一口に言っても、その背景は千差万別です。私たち教員がそれぞれの生徒が持つユニークな強みと、見えにくい課題を理解するためには、単に言語力(英語力)、異文化経験と理解だけでなく、その海外経験がどのように形成されたのかを知ることが不可欠です。一人ひとりの生徒が抱える課題や可能性を正確に理解し、適切なサポートにつなげるために「帰国のタイミング」の観点から考察をまとめます。

未就学、小学校低学年で帰国

典型的な事例:0〜5歳まで海外に滞在 → 帰国後約2年で「普通の日本の子」になり、英語も海外での生活体験などもほとんど忘れてしまう。

言語面

  • 英語力は短期的には身につくが、帰国後の環境で急速に失われやすい。
  • 日本語習得が未完成(海外でプリスクールやデイケアなどに通っていた場合)でも、日本の学校にスムーズに取り込まれることで日本語が急速に伸びる。保護者が驚くほどあっという間に日本の子に戻ってしまう。

学習・適応面

  • 学力的な空白は比較的少なく、日本への再適応も容易。ほぼ障壁を感じることなく、溶け込んでいくことができる。

課題

  • 海外経験が「潜在的な柔軟性」として残る一方、英語力や文化体験そのものは消えやすい。

中学進学時に帰国

◆典型的な事例:小学校中学年〜高学年を海外で過ごし、日本で中学入学。

言語面

  • 英語は日常会話〜基礎学習力程度まで身についているが、日本での使用環境がなければ、やはり急速に低下していく。(英語力を保持したければ、それなりの対応が必要)
  • 日本語の基礎はある程度ある一方、漢字・作文・抽象的読解に弱点が出やすい。(「大丈夫そう」に見えるので、帰国後日本の学校での学びにおいて、取り残されてしまうこともある)

学習・適応面

  • 中学受験や日本の進学制度への対応で苦労しやすい。(学校や塾でも、取り残される可能性があり、本人は準備不足を感じる。中高一貫校の受験などへの対応についてもプレッシャーに感じることがある)
  • 現地校での経験と日本の受験準備(塾に通うなど)のギャップに戸惑うことがある。

課題

  • 思春期初期と重なり、アイデンティティ形成に影響。
  • 日本への適応(文化も学校環境、学習環境)、受験準備のプレッシャーでストレスがかかる。
  • 「帰国子女」として英語を期待されるが、本人の実力との間にギャップが生じることもある。

高校進学時に帰国

◆典型的な事例:小学校〜中学を海外で過ごし、日本で高校受験・入学。

言語面

  • 英語はある程度定着し、実用的なレベルに達しており、強みになりやすい。
  • 日本語は日常会話に問題はないが、国語の論述・長文読解などに弱さが残る。

学習・適応面

  • 日本の受験文化・校則・集団規範への適応などに強い違和感を抱きやすい。
  • 「帰国生入試」や「国際コース」など受け皿がある場合には有利だが、一般受験枠ではハードルが高いと感じる事が多い。

課題

  • 英語力を強みにできる一方、日本語力の不足と環境・文化への適応で「二重の課題」を抱えることもある。
  • 中高一貫校での学びに関しては、途中編入が難しい場合が多いので、帰国の時期や編入のタイミングに関しては注意が必要。

高校在学中・卒業後に帰国

◆典型的な事例:高校を海外で過ごしている最中に帰国のタイミングを迎えたが、日本の中等教育学校には編入できず、選択肢が限られる。海外で高校を卒業し、帰国後大学受験することを考えている。また、大学進学先としては「日本の大学」か「海外大学」かで迷う。

言語面

  • 英語力はアカデミックレベル(学問的な内容を「読む・書く・聞く・話す」すべての面で、論理的かつ正確に行える能力)に達することが多い。
  • 日本語は日常生活レベルは十分だが、学問的文章表現・論理的読解に関しては訓練しないと弱くなりやすい。

学習・適応面

  • 高校在学中の帰国となると、帰国後に編入できる学校が限られる(通信制・インターナショナルスクール・一部私立校など)。
  • 日本社会や学校文化への再適応に強い困難を伴う。大学入学を機に帰国する場合には比較的スムーズに適応することができる。

課題

  • 帰国直後の進路選択が本人の将来に直結するため、教育相談・制度理解などのガイダンスが不可欠。
  • 成功すれば身につけた国際資質が大きな強みとなるが、制度の狭間に落ちてしまい、持てる力を活かすチャンスを失うリスクもある。

では、私たちはこの情報をどのように活かせるのか?

「受け入れの際には、個々の生徒の帰国のタイミングについて調査をする」個別のニーズ(何を活かし、どんなサポートが必要か)をしっかりと把握する

「日本語や学習面での見えないギャップを理解し、補習や個別の配慮を検討する」本人のニーズ(何を活かし、どんなサポートが必要か)をしっかりと把握する

「海外での経験や多様な文化を教室や学校で活かす機会を作る」本人が海外での経験や体験、身につけた能力などをプラスに捉え、それを活かして行こうという意欲を持てるようにリードする